イオンのマスク禁止令が炎上した根本的理由
はじめに
先日イオングループは、従業員が接客時にマスクを着用することを禁止しました。
従業員への告知文によると
・マスク着用により表情がわかりにくくなる
・客とのコミュニケーションの妨げになる
・マスク姿が客に不安感を抱かせる
等を理由にして、従業員のマスク着用を原則として禁止したそうです。
この決断に対してSNS上では批判の声が圧倒的に多く(分析ツールによるとネガティブな反応が9割)、イオングループは厳しい立場に置かれています。
一体なぜそこまで多くの人々からの反感を買ったのでしょうか。
根本的原因は何か
twitterやニュース記事のコメント欄を見る限り、批判する人々の意見としては大きく分けて2つあります。
・衛生上の観点から従業員のマスク着用を認めるべき
・会社が従業員の行動を制御すべきではない
この内、今回の決定を大々的なニュースに至らしめた要因であるのは後者であると私は考えています。
一部のクレームに屈して従業員の選択の自由を奪ったこと、即ち従業員が客よりも下等な立場にあるとイオングループがみなしたことに多くの人々が批判の声をあげたのです。
イオングループは、何万人といる自社の従業員の健康よりもクレームを入れた極少数の客が得る僅かな満足感を優先させました。
日本のサービス業の象徴とも言える、“お客様は神様だ”という精神を忠実に実現しており、その時代錯誤な姿勢が多くの人々から嫌悪されたのです。
お客様は神様だ
この考えは、昭和〜平成初期においては絶対的なものであり、日本のサービスの質の高さを証明するものでもありました。
しかし平成半ば〜現在にかけてこの存在意義に疑問符がつきはじめます。
その理由として、少子高齢化や人口減少により労働力不足が現実味を帯びてきたことが挙げられます。
これにより労働者の需要が高まり地位が向上していくとともに、労働生産性という概念が重視され始めて過剰なサービスが淘汰される時代に突入したのです。
労働生産性
労働生産性とは、単位時間当たりに各人が産み出す付加価値の総量を指しています。
この概念が日本において重視され始めたのはここ最近のことです。
戦後〜高度経済成長期には、日本は右肩上がりで人口が増加していたため労働生産性など意識せずとも圧倒的な経済成長を遂げることができました。(GDP=生産人口×労働生産性)
しかしバブル崩壊後に人口減少社会に突入すると、一変して労働生産性というワードが声高に叫ばれるようになりました。
生産人口が増えるどころか急激に減少していく中、労働生産性を上げていかないことには日本経済は衰退する一方だからです。
政府も近年ようやく労働生産性の重要性に気づき、今年4月には働き方改革関連法を整備して人々の生産性を向上させるべく舵取りを始めました。
生産性を上げていこう、というこの社会的な風潮は当然サービス業にも届いています。
過剰なサービスや無料の“おもてなし”を廃止して、客と対等な立場で接しようとする会社も現れてきました。
従業員と客はモノとカネの交換をするだけの関係であり、そこに上下関係など存在しないので当然っちゃ当然ですが…
時代を逆行するイオン
そんな世間の動きなど全く気にすることなく、イオングループは“お客様は神様だ”という従来の精神を貫いてしまったのです。
イオングループは小売業界の雄とも言えるほどの規模を持つ巨大グループであり、その影響力は計り知れません。
本来ならば時代をリードしていく立場であるイオングループが、事もあろうに時代を遡る姿勢を見せたことで多くの人々から失望されたのです。
イオングループが取るべき解決策
では今後イオングループはどのような対策をとるべきでしょうか。
まず間違いなく言えることは、時代に逆行する今回の規定をすぐさま撤回することです。
これほど批判を浴びても12月27日現在未だに撤回を公表していません。
何を躊躇っているのか理解に苦しみます。
確かにマスク着用により従業員と客のコミュニケーションに支障が生じているのは事実なのでしょう。
しかしそうであるならば、該当する従業員各々に対して、店長などが注意喚起を行って改善していくべきではないのでしょうか。
「何人いると思ってるんだ、実現可能性がない」
↑このように思われる方もいるでしょう。
でもよく考えてみてください。
果たしてそれほど何人もいるでしょうか?
以下これを式で表してみました。
マスク着用で意思疎通に不便が生じる従業員に遭遇する機会数
=イオン全従業員×マスク着用したことのある従業員の割合×マスク着用時における客との平均交流回数(一人当たり)×意思疎通に不便が生じる確率
↑をご覧になってどう思われるでしょうか。
私は限りなく0に近いと感じます。
そもそもイオンで従業員とコミュニケーションを取りますか?
少なくとも私はありません。
個別に対応していくことは十二分に可能であると思います。
まとめ(日本の現状)
以前よりかは大分マシになったものの、まだまだ日本では“お客様は神様だ”という意識が客側にはもちろんのこと、店側としても依然として存在します。
私はある小売チェーン店で学生バイトをしているのですが、そこにはしばしば態度が大柄な客が来店します。
ある40過ぎのおばさんは閉店5分前に来店し、閉店時刻を過ぎても焦るそぶりをまるで見せずに堂々と買い物を続けます。
時には閉店時刻を20分過ぎてから会計をすることさえあります。
私はバイトし始めて二日目に彼女に遭遇し、その際に閉店時刻を過ぎている旨を伝えたのですが、彼女からは「うっさいねん、こっちは客やぞ!」と大声で逆ギレされてしまいました。
後から店長に聞いた話だと、そのおばさんは常にこのような行動を繰り返す常連“客”だそうです。
驚いたのがおばさんに対する店の方針です。
いくら迷惑でも客であることに変わりはないので、おばさんが買い物を終えるまでひたすら従業員一同待ち続けるそうです。
私はこれを聞いて驚き呆れてしまいましたが、まだまだこのような店が日本にはたくさん存在するのが現実なのでしょう。
風潮というのは一旦根付いてしまえば、それを取り除くのは非常に難しいです。
日本において客と従業員が対等な立場で接するようになるには、まだまだ多くの時間がかかります。
いつか実現することを願うばかりです。
↓本日更新しました。良ければどうぞ